「中小企業経営強化税制」ってどんな制度

中小企業経営強化税制とは中小企業の企業力の強化や生産性向上のための新たな設備投資を後押しする制度です。大幅な経費の削減を実現できるため、設備投資の際にはぜひ活用して頂きたいと思います。本記事では制度の詳細と申請のために必要な準備について解説していきます。

目次

制度の概要

中小企業経営強化税制は中小企業強化法の経営力向上計画の認定を受けた一定の中小企業者等が、新規に特定経営力向上設備を取得もしくは製作した場合、その事業年度において特別償却、または税額控除を認める制度です。
当制度の認定を受けることで以下のメリットがあります。

①特別償却限度額:
取得価額から普通償却限度額を控除した金額に相当する金額と併せて、その取得価額の全額を即時償却することができます。通常は複数年にわたって減価償却を行いますが、特別償却を行うことで、設備投資をした事業年度の減価償却費を増やすことができるため、法人税額を抑えることができます。法人税の支払総額自体は変わりませんが、設備投資をした年度のキャッシュフローに余裕が生まれるため、高額な設備投資へのチャレンジが可能となります。

②税額控除限度額:
取得価額の10%(資本金3000万円超1億円以下の法人は7%)相当の法人税の税額控除を受けることができます。支払総額を10%抑えることができるため、大幅なコストカットとなります。なお、その事業年度の調整前法人税額の20%相当額が税額控除の上限額となります。取得価額の10%相当額がその事業年度の法人税額の20%を超える場合、控除上限を超えた分を翌期に繰り越すことができます。(繰越しは最大1年間です。)

①と②のメリットを比較し、どちらが自社に適しているかを判断しましょう。

対象事業者

資本金の額、または出資金の額が1億円以下の法人、もしくは常時使用する従業員数が1,000名以下の中小企業のうち、中小企業等強化法の認定を受けた事業者が対象になります。

対象設備

設備の種類用途又は細目最低価額/1台あたりの取得価額販売開始時期
機械装置全て160万円以上10年以内
工具測定工具及び検査工具30万円以上5年以内
器具備品全て30万円以上6年以内
建物附属設備全て60万円以上14年以内
ソフトウェア設備の稼働状況に係る情報収集機能及び分析・指示機能を有するモノ70万円以上5年以内

取得価額は設備の設置にかかる費用のうち、減価償却費として計上されるものが対象となります。また、自社で製作したものも対象に含まれるため、幅広い用途の機械装置等を対象とすることができます。
設備投資を行う予定である事業者はもちろんですが、すでに設備投資を終えた事業者でも60日であれば、過去の投資をさかのぼって、対象とすることができます。

中小企業経営強化法の認定を受けるためには

中小企業経営強化税制の申請には「中小企業経営強化法」の認定を受ける必要がありますが、そのためにはまず経営力向上計画を作成し、認定を受けなければなりません。認定は各事業分野の担当省庁が計画内容を審査し、行います。

経営力向上計画の概要

経営力向上計画は機械装置やソフトウェアの導入によって、企業力の強化や生産性の向上が達成できる見込みがある場合に申請することができます。
申請枠はA~Dの4つの類型に分かれており、各申請枠ごとに申請要件が異なります。申請要件は以下の通りです。

A類型生産性が旧モデルから1%以上向上する。
B類型投資収益率が年利平均5%以上向上する。
C類型可視化・遠隔操作・自動制御のいずれかに該当
D類型修正ROAもしくは有形固定資産回転率が一定割合以上向上する。

申請要件は主に導入する機械装置・ソフトウェア等の効果に基づきますが、その効果を判断するのはA類型のみ工業会、B~C類型は経済産業局です。効果が認定されたのち、事業の現状や市場の分析、自社の生産性がどれだけ向上するかなどの数値例を記載した計画書を作成し、これが認定されると、経営力向上計画が採択されます。

経営力向上計画の申請フローの詳細

申請に係る準備の詳細は以下の通りです。簡単版事業計画書を作成するようなイメージですが、過去にこのような書類を作成したことがない場合、作成にかなりの時間を要する可能性があります。

①事業分野と事業分野別指針の登録計画に係る事業に属する事業分野と事業分野別指針名を登録。
②実施時期の登録経営力向上計画の実施時期を3~5年のいずれかから選択し、登録。
③現状認識の登録経営力向上計画の現状認識の登録。①自社の事業概要②自社の商品・サービスが市場の動向、競合の動向③自社の経営状況④経営課題(各400字)
④ローカルベンチマークの登録現在と目標の財務情報を入力すると、ローカルベンチマークが自動算出される。
⑤経営力向上の目標及び経営力向上による経営の向上の程度を示す指標の登録:事業分野別指針を基に、指標の種類を選択し、経営力向上計画の実施期間に応じた伸び率の算出を行うために、現状と計画終了時の目標数値を記載。(財務指標の登録は任意記載)(3)具体的な実施事項・実施内容・実施期間(1000字)
⑥経営力向上の内容を登録経営力向上計画の具体的な取組みを記載する。実際に購入する設備の詳細を記入する。
⑦経営力向上計画を実施するために必要な資金の額及びその調達方法の登録:使途・用途、資金調達方法とその金額を登録。※事業継承等に必要な資金に関して、経営者の個人保証を不要とする中小企業信用保険法特例による金融支援を希望する場合に限り、「純資産額及びEBITDA有利子負債倍率」を登録する。
⑧経営力向上設備等の種類の登録税制措置を利用する場合は、取得年月、支援措置、設備の名称・型番等、所在地、証明書等の文書番号を登録する。
⑨以下は事業継承等がない場合には不要
⑨特定許認可等に基づく非継承特定事業者等の地位の登録事業承継等を行う場合であって、かつ、特定許認可等の承継を希望する場合に登録する (事業承継等がない場合は登録不要です) 
⑩事業継承等事前調査に関する事項の登録事業承継等を行う場合であって、かつ、中小企 業事業再編投資損失準備金または経営力向 上設備D類型の活用を希望する場合に登録し ます。 (事業承継等がない場合は登録不要です) 
⑪事業承継等によ り、譲受け又は 取得する不動産 の登録 所有権転移登記の登録免許税の軽減措置の適用を希望する不動産について登録します。 (事業承継等がない場合は登録不要です) 
⑫経営力向上 設備等の種類の 登録事業譲渡により取得する不動産であって、不動産取得税の軽減措置の適用を希望する不動産について登録します。 (事業譲渡等がない場合は登録不要です)

経営力向上計画を作成するメリット

前述した中小企業経営強化税制への申請が可能になるだけでなく、その他にもいくつかのメリットがあるためそれらを紹介していきます。
①補助金の加点項目:
機械装置やソフトウェアの導入に活用できる「ものづくり補助金」「事業再構築補助金」「IT導入補助金」などの補助金は必須書類の他に、加点となる書類を提出することで採択率をアップさせることができます。せっかく経営力向上計画を作成するのであれば、補助金への申請を併せてご検討されてはいかがでしょうか。
②経営の見直しになる:
事業を行っていると、日々の忙しさに追われ、経営状態や今後の方針を見直す機会がなかなかありません。経営力向上計画の作成には自社の現況や市場の分析、競合の分析等を行う必要があるため、経営戦略を見直す良い機会となります。

まとめ
中小企業経営強化税制を活用することで、コスト負担の削減や、キャッシュフローに余裕を持たせることができます。まずは自社がこの制度の対象であるかをチェックしてみましょう。
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